FSLogix について触れた記事を書いたことがありますが、詳しく紹介したことがなかったので改めて紹介記事を書きます。今回紹介する FSLogix を使うと、VDI の利便性を向上させるとともに、管理者の負荷を大幅に軽減することができます。
ユーザープロファイルの重要性
ユーザープロファイルとは
そもそもユーザープロファイルって何なのかというと、Windows においてユーザーごと用意された専用のデータ領域みたいなものです。具体的にいうと、C:\Users\<User Name>
のように Users フォルダ配下にユーザーごとに作られるフォルダのことを指します。この中には、マイピクチャやマイドキュメント、ダウンロードやデスクトップフォルダといったデータが含まれています。このユーザープロファイルは通常デバイスのローカルディスク内に生成され、これはローカルプロファイルと呼ばれます。
ユーザーごとに用意された専用のデバイスをずっと使い続ける場合は問題ないですが、デバイスを入れ替えたり、頻繁に異なるホストへサインインするような仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)の環境では常に同じ環境(=ユーザープロファイル)を使い続けたいことがあります。ローカルプロファイルの場合、デバイス内にデータが保存されるので他のデバイスとデータの状況が異なってきてしまいます。
そこで、常に同じユーザープロファイルを利用できるようにいくつかの方法が提供されています。次の3つが主なユーザープロファイル機能です。
- 移動ユーザープロファイル
- フォルダリダイレクト
- ユーザープロファイルディスク
移動ユーザープロファイル
移動ユーザープロファイルは外部のディスク領域にユーザープロファイル領域を保存し、サインイン時にそれを読み込みます。データを丸ごと保存しておくので管理はしやすいですが、データ量が増えるとサインイン・サインアウト時の時間が増大していく傾向があります。
フォルダリダイレクト
フォルダリダイレクトは移動ユーザープロファイルのデメリットをカバーするためにいくつかのフォルダをショートカットのように設定し、データを全て読み込まないようにする手法です。サインイン・サインアウト時の読み込み時間は短縮されますが、データの実体が外部のサーバーにあるためデータの取り扱いに時間がかかることがあります。
ユーザープロファイルディスク
ユーザープロファイルディスクは移動ユーザープロファイルの進化版に当たるようなもので、データの保存先をネットワークドライブとして指定することができます。これによってアクセス速度は向上しますが、ネットワークディスク上にあるデータを扱えないなどの一部アプリケーション側で対応できない問題が発生することがあります。
FSLogix によるユーザープロファイルコンテナー
FSLogix とは
FSLogix は Microsoft が提供するユーザープロファイル管理ソリューションです。FSLogix を使うことにより、従来よりもユーザープロファイルを簡単に快適に管理することができます。元は FSLogix 社が提供する製品でしたが、2018年ごろに Microsoft が買収しました。
FSLogix を使うことによって主に次のような特徴があります。
- プロファイルの読み込み時間が肥大化するのを防止する
- マルチセッション環境で Office アプリを使える
- プロファイルデータを簡単に冗長保存できる
- ゴールドイメージとアプリの管理を簡単にする
FSLogix の5つの機能
FSLogix には主に5つの機能がありますが、その中でもユーザープロファイルを管理する機能としてユーザープロファイルコンテナーがあります。これらの機能により、従来の機能でのデメリットを解消するとともにユーザーの利便性とゴールデンイメージの管理性が向上します。
- プロファイルコンテナー
- Office コンテナー
- クラウドキャッシュ
- アプリケーションマスキング
- Java バージョン管理
プロファイルコンテナー
ユーザープロファイル領域を仮想ハードディスク(VHD/VHDX)形式で外部のストレージに保存することができます。VHD 形式のファイルをマウントすることにより、シームレスに読み込むことができます。移動ユーザープロファイルとは違い、起動時は仮想ハードディスクのマウントのみで早く起動し、そのあと個別に必要なデータを取得します。また、多くのアプリの制約も受けずに利用できます。
Office コンテナー
ユーザープロファイルの内、Office 365 で使うデータのみを仮想ハードディスク形式で外部のストレージに保存することができます。Office 365 アプリを非永続的環境で利用する際に有用です。プロファイルコンテナーを利用している場合は、自動的に Office 365 アプリのデータも含まれているので併用する必要性はないです。
クラウドキャッシュ
上記のプロファイルコンテナーや Office コンテナーを複数の保存先を指定して複製保存することができます。保存先は優先順位をつけられるので、どの保存先を一番最初に読み込むかも制御できます(読み込みに失敗したら次の保存先を見ていく)。最大4箇所まで指定して常に同じデータを保存できるので、ストレージの冗長化に対する考慮事項を減らすことができます。
アプリケーションマスキング
ユーザーごとに利用できるインストール済みアプリケーションを制御できる機能です。具体的には、ユーザーやグループごとに特定のアプリを利用できるかを定義したルールファイルを用意します。ルールファイルに従って、FSLogix がユーザーにアプリを見せるかどうかを制御します。これにより、ゴールドイメージは一つのままで利用するユーザーやグループごとに異なる環境を提供することができます。
Java バージョン管理
アプリケーションマスキングと同様にインストール済みの Java バージョンを制御できます。これもゴールドイメージを共通化し、管理者の負荷を軽減することにつながります。
まとめ
FSLogix を使うと従来のプロファイル管理手法でうまくいかなかったポイントを解消することができます。サインイン・アウト時の時間を短縮し、ユーザーの利便性を向上できます。また、クラウドキャッシュやアプリケーションマスキングといった機能で、管理者の負荷を軽減できます。
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